旅の幻想


狂おしいほどの色彩に彩られた


目の眩むような壮大な世界へと


俺は踏み込んだ




甘ったるい香りが俺の身体に絡んで


胃は摩訶不思議な味に心地よいだるさを感じる




フードやベールを纏った人が俺を見て


声を潜めて喋り


淀んだ瞳を向けてくる




財布には薄汚れた紙幣や銅貨が溜まって


俺の手に取れない青い匂いを残す



俺の知らない


匂い









そして


世界





まるで蜃気楼のようだ





もしかしたら、旅には知らない女神がいて


俺の手を幻想的な世界へと引いて行ってくれてるのかもしれない





その代わり女神さまは全てを置いてこいと


俺にいうんだ





いいだろう





女神と一緒に心中する気はさらさらないが





今は言われるがまま


二本の太い足を牛歩が如く進め


たとえ身も心も疲労に溺れそうになろうとも





俺は女神に魅せられて




巡る世界のこの場所で


次の幻想を求め続ける





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